想い

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実際その日が来るまでは、 きっと物凄い喪失感に陥るのだろうと思っていた。私だけではなく周りの人達もそれを心配していた。 すぐではなくタイムラグがあって陥るのだろうとも思った。

ケルベロスが旅立って10日が過ぎた。 今の私は、悲しくも寂しくもないの。 たった10日前までは確かに目の前にいた大きな存在。 もちろん毎日彼の事は頭をよぎる。 でも何と言ったらいいのだろう。 それはもう随分と前の事のように感じる時もあるし、 サイファだけが目の前にいる事に何の違和感も感じない。 見えないけれどいるのではないかと感じることもある。 ふとした瞬間、ケルベロスはこんな顔するだろうな・・・ と微笑んでいる自分がいる。

思うに、今までは命を失う度に悲嘆に暮れていた。 その殆どが後悔からきているものだったのだと、 改めて気付いた。 もっとしてあげられる事があったのではないかとか、 もっと一緒にいてあげれば良かったとかいう類のもの。 どんな命でも失って後悔しなかった事はない。

ケルベロスに関しては、全く後悔していない。 これは初めての経験。 躊躇せずに行動を起こし、沢山の人達から支援を受け、 彼に施せる治療は全て受けさせた。 これは幸いといっても過言ではないと思うが、 その治療の為の片道2時間弱のふたりの時間は、 すごく密接で幸せな時間だった。 彼にとっても私にも。 その後何事もなかったかのように日常に戻り、 それまでの常であったように、 甘えて、笑って、走って、楽しく過ごせた。 緩和ケアに入ってからも、 可能な限り大好きな山野へ連れて行って過ごし、 エネルギー・レベルが低い時は部屋でゆっくり過ごした。 腫瘍が脳内に達し発作で苦しみ始めた時、 迷わず鎮静剤で眠らせ、 そのまま眠りの中で旅立たせると決めていた。 意識が混濁している中、 最後に鎮静剤をうつ時には覚醒していた彼の目を見て、 もう頑張らなくていい、眠ろうねと伝え、 彼は確かに理解し、体の力を抜いて深い眠りに落ちた。 そして18時間後、静かに旅立った。

8年と4日目。 楽しく充実した時間が過ごせたと思う。 ふと浮かぶ彼はいつもちょっと笑っていて、 ついついこちらも微笑んでしまう。 私だけではなく多くの人を幸せな気持ちにさせた。 何て素晴らしい命だったのだろう。 そしてその傍らにいられた事を心から誇りに思う。

これからも関わるであろういくつもの命に対し、 悲しまずに送れる術があるのだという救いを、 ケルベロスは教えてくれた。

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